対話3 PERMANENT FURNITURE水船氏 (対談)

今回の対話は、大阪高槻に「家具工房」をかまえる水船氏をゲストに迎えて対話を行いました。

進行:
お二人の出会いのきっかけは、何だったんでしょうか?

野島:
水船君は、工房のスタッフの同級生なんです。
スタッフから、同級生が独立すると聞いてちょうど展示用の家具をどうしようか悩んでいたときだったので
一度会ってお願いしたんです。

きっかけは、僕が東京の展示会で展示用の橋をつくってもらったことでした。

野島:
結構むちゃなお願いをして、靴を並べられる橋をつくって欲しいってお願いしました。
考えているポイントを良くとらえて完成させてくれました。

進行:
なるほど、
ちなみに、水船さんは独立されたのはいつでしょうか?

水船:
2010年の9月に独立しました。
電気工事以外は、自分で用意して工房を完成させました。

始めは、知り合いからの注文で、半年して少しずつ問い合わせ頂けるようになりました。

九州の宮崎に伝統工芸師のところに弟子入りさせてもらって修行させてもらいました。

ちなみに、ご出身はどちらですか?

生まれは、大阪です。
高槻で育って大学でて横浜で家具の会社から建材の会社にそこから独立したい思いが出来て
福知山の職業訓練校に行きました。

その後、宮崎に行くことに。

よくよく考えてみると住まいのことに関わってきてはいました。
営業から作る仕事へ変わった感じです。

進行:
どうして、家具をつくろうと思ったんですか?

水船:
大事にしてもらえるものをつくりたいと昔から思っていて。
家具は、そんなにいくつも買えるものでは無いですし。
そういうものをつくらせてもらうのは幸せなことだと思っています。

シンプルなものは、誰でも見てもらえると思っていて。
お客さんの好みもありますし。
僕がある程度の方向性さえもっていればいいと思っています。

完成系を売っているわけではないので、コンセプトというようなものは強く考えてはいないんです。

それに下済みの方がまだ長いのでそのときの影響が大きいと思っていて。

野島:
僕もメーカーにいたときは、今とは別の作業をしていました。

独立した最初は、カジュアルもやりたいし、いろいろな考えがあって。
影響を受けた線を描いてしまいました。
最初は無理でした。
しばらく苦しみましたね。

僕の場合は、コンセプトをしばって、やれることをあえて制限してクリアーした感じでした。

今は、らしい線が描けるところというか。
自分が思う線があるんです。

前はもう1ミリとってたんだけど、今はこうなるというのがわかるようになって来ました。

それは、会社時代に型紙を何百何千と切ったからわかったんだと思います。

すごいと言われる型紙師がいるんですけど
それは、奇麗に木型にそうということでは無くて。

いい線を描ける。ということなんです。

進行:
吉靴房では、主に革を素材としていますよね。
水船さんが、普段扱われている木材にはどのような要素がありますか?

木材は、色・堅さ・重さ・肌触り・木目・フシ・・と 色々ある中でも、

次に気にするのは「反り」です。

反りがある材料は 使い方が限られてくるので、使いにくい材です。
使いにくいというだけで、悪材ではないので 適材適所で使います。
バリバリに割れてたりしない限りは 何かに使いますね。
地球規模でみても貴重な木ですから。

関係無い話ですが、木っ端はお風呂屋さんで オガクズは農家の方に
それぞれ使って頂いています。捨てれば産廃なので。

進行:
野島さんが以前おっしゃっていた、革は食べ物の余り物という話に通じるところがありますね。

進行;
例えば、その中でもいい素材ってどういものなんですか?
その他にも木材ならではの特徴があれば教えて下さい。

水船:
良いかどうかというのは難しい所ですが、材料は木なので天然のものだけに 色々あります。
ワレや虫食いが 最も初歩的な所です。

それから、木材ゆえの特徴は 伸縮する事かと思います。
部屋の湿度に影響されます。その辺りが 制作時に意識する事ですね。
それなりにあそび が無いと、割れます。少し動く余裕を設けています。
後は、木に限った事ではないですが、経年変化も大きな魅力だと思います。

 

進行:
工房を拝見したんですが、凄い数の工具ですね。
工具は、どういった物があるんでしょうか?

水船:
数はとても多いので例えば

革スキ という刃物があります。
野島さんが ほうちょう と呼んでいるものが これだと思います。
本来 木工用の刃物は 左の様な ノミ と呼ばれるものです。

刃先は真っ直ぐに研いで、叩ける様に 柄にも金物が付いています。

吉靴房で使用しているような
革スキは 木工用の刃物ではないです。
刃が薄すぎて、切削量が多いと刃が欠けたりします。
僕は 刃先をわざと丸く研いで 雑用に使っています。
ノミでは不便な時に使います。チョイ削り専用 といった感じです。
同業者もほとんど使わないと思いますが、僕は よく使います。

革で使うのと 木で使うのと 大きく異なるのは、
刃先形が色々ある事でしょうかね。たぶんですが。

スパっとよく切れる事はもちろん大切ですが、この形に研ぐというのも
それだけで なかなか難しい事です。

瞬間的に切れ味が良いという事と、長時間切れる事は 研ぎ方が違うので、
その辺りも気にする事ではあります。

長く切れるという事も とても大切なんです。

進行:
今回新しく共作する作品があると伺ったんですが

どのようなものですか?

水船:
まず意識した事は、吉靴房らしく和と洋を満たす形です。
まず というより、これに尽きるかもしれません。
椅子である時点で 西洋の文化なので、和への意識に重点をおきました。

普通の4本脚だと 畳が凹んでしまうので、畳ずり と呼ばれる脚にしました。
点ではなく 面で支えるので、畳へのダメージの軽減を期待しての事です。
和室 洋室 どちらでもお使い頂けます。

あとは2色にする事です。吉靴房に対する僕のイメージが 2色 だからです。
いつもは単色で製作する事が多いので、わりと悩んだところです。
パッと見から2色 というよりも、これくらいが家具にはしっくりくると思い、
少しですが 2種類の木を使いました。
面形状も相まって、和っぽさも感じられるのではないかと思っています。

革はとても存在感があるので、木の方にも存在感があるより シャープに
仕上げたいと思い、いつもよりも10%程度ですが 部材を細くしています。
部材の本数がが増えるので 重くしたくなかった事も その理由です。

いい結果が出たのではないかと思っています。

野島
「手づくり靴屋としての技術は他のジャンルでも応用できることがあります。
ものづくりの人間がお客様にご提案できることは生活スタイルの提案で、
それが広がることで文化の一部に刺激を与えられることと思います。

今回家具作家さんとこのような機会が作ることができ益々可能性の広がりを感じました。
今後も少しづつですが新しい商品への取り組みを進めたいと思います。
このような企画が進められ、水船さんに感謝しています。」

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水船 洋規〔Hiroki Mizufune〕

PERMANENT FURNITURE
〔家具工房 パーマネント ファニチャー〕
1978年生まれ
近畿大学農学部卒
福知山高等技術専門校 家具工芸科卒

2010年9月 PERMANENT FURNITURE 設立
http://permanent-furniture.com/PERMANENT_FURNITURE/Top.html